Lanelet2 とは
Lanelet2 は、FZI Research Center for Information Technology が開発したオープンな HD マップ形式 + C++ ライブラリで、Autoware を始め多くの研究用スタックで標準的に使われています。中心となるアイデアはシンプルで、道路を小さな「lanelet」の集まりとして表現するというものです。各 lanelet は左右の linestring で囲まれ、隣接する lanelet との接続関係や規制要素 (regulatory element) を明示的に持ちます。
入門としては、Lanelet2 の元論文 (Poggenhans et al., 2018) が読みやすいです。
ファイルの中身
Section titled “ファイルの中身”物理的には、OpenStreetMap の XML ファイルに独自のタグを足したものです。
- Node — 緯度経度 (必要なら標高) を持つ単一の点。
- Way — Node を順番に並べたもの。Lanelet2 では境界線、停止線、信号の支柱などとして使われます。
- Relation — 型付きのグループ。
lanelet型の relation は左右の Way を 1 組にまとめ、速度制限・道路種別・一方通行などの属性を持ちます。
これに加えて Lanelet2 はライブラリとして、ルーティンググラフ、規制要素 (信号・優先関係・速度制限・停止標識)、各種ジオメトリ計算を提供します。
OpenDRIVE との違い
Section titled “OpenDRIVE との違い”どちらも HD マップを記述しますが、自動運転スタックの異なる側面に最適化されています。
| 観点 | Lanelet2 | OpenDRIVE |
|---|---|---|
| 道路の表現 | ポリライン (linestring) | 解析的 (arc / spiral / 多項式) |
| トポロジ | lanelet 同士の前後・隣接関係を明示 | lane section + junction の接続 |
| 主な利用先 | Autoware の Planning、Perception の ground truth | シミュレータ (CARLA、esmini、RoadRunner) |
| ファイル形式 | OSM XML | 独自 XML |
| 手で編集する難易度 | 小さな範囲なら現実的 | どの規模でも基本的に難しい |
Lanelet2 は手で開いて読める分かりやすさが強み、OpenDRIVE はシミュレータが扱いやすい精度が強みという棲み分けです。
主な作成ツール
Section titled “主な作成ツール”- TIER IV Vector Map Builder — Autoware を念頭に作られた無料のブラウザベース Lanelet2 エディタ。レーンと規制要素 (信号、停止線、横断歩道、駐車場など) を作れ、点群を参考レイヤーとして読み込めます。Autoware で使うマップを作るときの、まず最初の候補です。
- JOSM + Autoware Lanelet2 プラグイン — 古くからある OSM 用のデスクトップエディタを Lanelet2 用に拡張したもの。機能は豊富ですが、Autoware 互換の出力には手作業での修正が必要になる場合があります。
- 手書きの OSM XML — 小さな修正なら現実的ですが、規模が大きくなるとつらい。
- drawtonomy — Lanelet2 の
.osmを読み込んでブラウザ上で編集し、ラウンドトリップエクスポートできます。
drawtonomy の位置づけ
Section titled “drawtonomy の位置づけ”drawtonomy はブラウザで動く 2D の Lanelet2 エディタです。都市規模や実測精度が求められる作業における Vector Map Builder や JOSM の代替ではありませんが、2D 編集の一通りの流れをカバーしています。
- Lanelet2 の
.osmを読み込み、lanelet を編集可能な Lane / Linestring シェイプとして表示します。 - 境界の形状やレーン接続を編集できるほか、規制要素 — 信号、交通標識 (速度制限を含む)、停止線、優先関係 — を UI 上で作成・編集し、対象の lanelet に紐付けられます。インポートしたものも、スクラッチから作ったものも同様に扱えます。
- Lanelet2 OSM として再エクスポートします。触っていない ID・タグ・規制要素は sidecar 機構 でそのまま保持され、編集した部分は新しいファイルにネイティブに書き出されます。
- 参照・確認、教育、論文・スライド用の図作成、小〜中規模のシーン作成に適しています。
2D ブラウザベースという設計上、以下は対応していません。
- 3D の詳細 — 標高、バンキング、橋、立体交差。drawtonomy のキャンバスは 2D です。
- 都市規模・実測精度の作成 — LiDAR や航空写真に重ねてトレースする作業。Vector Map Builder は点群を参考レイヤーとして読み込めますが、drawtonomy はできません。
- 数千 lanelet にまたがる一括編集 — フィルタやバッチ編集の機能はありません。
LiDAR 基準で都市規模のマップを作るなら、Autoware 向けは Vector Map Builder、OSM スタイルの汎用編集は JOSM が適切な選択肢です。
- Autoware の HD マップ — Lanelet2 が Autoware の中でどう使われるか。
- Lanelet2 の OSM マップを取り込む — drawtonomy への読み込み方。
- OpenDRIVE と Lanelet2 を相互変換する —
.xodrとの橋渡し。 - 比較: drawtonomy と JOSM
- 比較: drawtonomy と Vector Map Builder
- 比較: drawtonomy と MapToolbox