カットイン・車線変更・非保護左折のシナリオ図を作る
ADAS や AV のテストカタログを開くと、ほとんどの場合、似たような顔ぶれのシナリオが並んでいます。カットイン、車線変更、非保護左折、ラウンドアバウト進入、歩行者横断、先行車急減速 — テスト計画書・スライド・安全性ケース・論文のどれを書くときも、結局はこのうちのどれかを上から俯瞰した 2D 図として描くことになります。
drawtonomy は、こうした図を 同じスタイルで素早く揃える ことに向いています。
よく出てくるシナリオ
Section titled “よく出てくるシナリオ”このページで扱うのは、いずれも 機能シナリオ としての標準的な顔ぶれです。レーンテンプレートをひとそろい用意しておけば、それぞれ短時間のスケッチで仕上がります。
カットインシナリオ
Section titled “カットインシナリオ”別のレーンを走っていた車両が、自車の前方に横方向から入ってくる状況です。図には次の要素を入れます。
- 2 車線(または 3 車線)の道路。
- 自車(ego)を 1 つのレーンに、カットイン車両をその隣のレーンに置く。
- カットイン車両の開始地点から、自車レーンに入った終点までの Path 矢印。
- TTC、相対速度、縦方向の車間といったトリガを示すラベル。
カットインは AEB(自動緊急ブレーキ)と ACC(アダプティブクルーズコントロール)の評価で頻繁に使われるため、ADAS テストの中でも特に多く描かれるシナリオです。
車線変更シナリオ
Section titled “車線変更シナリオ”自車自身が車線を変えるシナリオ。次の要素を含めます。
- 複数車線の道路。
- 自車の開始位置、終了位置、軌跡。
- 関係する他車両(追い越される先行車両、後続車両、双方向道路なら対向車両)。
車線変更プランナー、ギャップアクセプタンスモデル、合流支援システムの評価でよく登場します。
自車が、専用の保護左折信号がない状態で、対向車線を横切って左折するシナリオです。図の要素は次のとおりです。
- 4 方向交差点。
- 自車の左折軌跡。
- 対向レーンを直進してくる 1 台以上の車両。
- 必要に応じて、自車の進入先レーンの横断歩道で待機・横断中の歩行者。
都市部 AV のプランニング研究での中心的なシナリオで、設計レビューでも頻出するコーナーケースです。
メモ:右側通行 / 左側通行について ここでの「非保護左折」は、米国・欧州・中国などの 右側通行 の文脈での呼称です。左側通行(日本・英国・オーストラリアなど)では同等のシナリオは「非保護右折」になります。drawtonomy は両方向を扱えます。
歩行者横断シナリオ
Section titled “歩行者横断シナリオ”歩行者が自車の前方を横切る状況。視界条件やタイミングを変えながら使われます。次を含めます。
- 横断歩道がある(あるいは無い)道路区間。
- 歩行者の軌跡。
- 自車の接近。
- 必要なら、歩行者を直前まで隠す遮蔽車両。
歩行者横断は、知覚・予測・脆弱な道路利用者(VRU)保護を論じるときの中心的なシナリオです。
自車の前方車両がブレーキするシナリオ。車間制御、ブレーキランプ検知、AEB の評価に使われます。次の要素を含めます。
- 単一レーン。
- 自車と先行車両。
- 先行車両に対する「減速中」の注釈。
- 自車の期待挙動。
ラウンドアバウト進入
Section titled “ラウンドアバウト進入”自車が、回転中の車両に道を譲りながらラウンドアバウトに進入するシナリオです。譲り判断・非マンハッタン形状でのギャップアクセプタンス・曲率対応の評価に使われます。次を含めます。
- ラウンドアバウトのジオメトリ。
- 自車の進入レーンと退出レーン。
- 1 台以上の回転中車両。
- 進入位置の譲り線と、進入路・退出路の横断歩道。
再利用できる起点テンプレート
Section titled “再利用できる起点テンプレート”代表的なシナリオごとに、道路テンプレートを最初に 1 度だけ作って .drawtonomy.svg ファイルとして保存してしまうのが効率的です。レーンのトポロジー情報は .drawtonomy.svg 内のメタデータに保持されるので、あとから編集してもジオメトリの整合性は崩れません。チームのスタータパックとしては、たとえば次のような構成が現実的です。
2-lane-highway.drawtonomy.svg3-lane-highway.drawtonomy.svg4-way-unprotected.drawtonomy.svgroundabout.drawtonomy.svgt-junction.drawtonomy.svgurban-arterial-with-crosswalk.drawtonomy.svg
シナリオのバリエーション(パラメータ違い、車線数違い)が必要になったら、該当する .drawtonomy.svg テンプレートを開き、登場物の配置だけを変えて、もう一度書き出します。
スタイルの決めかた
Section titled “スタイルの決めかた”カタログ全体のスタイルを揃えるための、地味だが効くポイントをいくつか。
- 自車の色を固定する。自車の見た目をシナリオごとに変えないこと。一度ルールにしてしまえば、読者は図のどこを見ればよいかを学習します。
- 進行方向の矢印。Path 矢印は進行方向に揃える。双方向の動きが本当に存在するシナリオでないかぎり、双方向矢印は避ける。
- トリガラベルは短く。「TTC = 2.5s」で十分。長い説明は周囲の本文に書き、図の中には押し込まない。
- グレースケールに耐える配色。学術誌は今もグレースケール印刷をすることがあります。AttributePanel で色・不透明度・線種を分けて指定できるので、色を抜いたときに線種・濃淡で区別が付くように作ります。
このやり方に向かないこと
Section titled “このやり方に向かないこと”- パラメータ走査。各バリアントを 1 枚ずつ描くツールです。100 通りのパラメータ組み合わせを扱いたい場合は DSL や scenariogeneration で生成し、drawtonomy で書くのは代表となる 1 枚だけにします。
- 実行可能なシナリオ。drawtonomy の OpenSCENARIO 1.3 出力は仕様の一部にとどまります(エクスポーターのドキュメント を参照)。パラメータ走査、条件付きトリガ、複雑な Storyboard は含みません。リグレッションスイートに入れる実行可能シナリオは、XML を手で書くか DSL から生成する前提になります。
- フォトリアルなレンダリング。drawtonomy は厳密に俯瞰 2D です。センサー視点のレンダリングが必要であれば、シミュレータのスクリーンショットを使ってください。
- ADAS テストシナリオの下書き — テストカタログの目線からの同じ流れ。
- 運転シナリオの抽象度 — ここで扱ったシナリオが「機能・論理・具体」のどこに位置するか。
- 自動運転の論文向け図版 — 同じスケッチを論文品質に持ち込む流れ。
- 設計レビュー用のスライド図 — スライドデッキ用の同じ図。
- OpenSCENARIO とは — 図を実行可能形式に書き出すための標準。